マスクの義務化で思い出したあの騒動
2021年2月現在、イギリスではコロナウィルスの感染拡大を受けて、スーパーや飲食店内など公共の室内でのマスクの着用が法律で義務づけされています。
大手のスーパーなどでは、マスクを持っていない顧客のために、入り口でマスクを配ったりしている。

コロナがはじまったころ、マスクをしている日本人を病原菌のように扱い、暴言を吐いたりバスから下ろしたりするいじめのようなことがロンドンのあちこちで起こっていたようですが、今はそれが嘘のように、公共の室内では100%全員がマスクをしています。
日本でも受験中にマスクを拒み、他の教室への移動も拒んだ1人のために、他の全員が教室を移動したり、国内線の飛行機でマスクをつけなかった人がいたために予定外の空港に緊急着陸したという騒動がニュースになりました。
イギリスでは、ある程度大きなお店の入り口には必ず大きい男性ガードマンがいて、ルールを守らない人がいたらつまみ出したり、万引きをしたりしたら捕まえたりしています。
そんなことをしなくてもほとんどの人がルールを守っている日本では、たまに言うことを聞かない人が1人でもいるとこんな大きな問題になるんだな〜と不思議な気持ちで報道を見ています。
ルールを守らないお客さんが絶対的に悪い?
さてさて、ホリエモンの餃子問題。
私も飲食店をしている立場として、この話には最初からすごく関心がありました。
ただ驚いたのは、ニュース報道やTwitterなどの意見を見ても、ほとんど「ホリエモン悪い」という意見ばかりで、他には「どっちもどっち」というのがごく少数あるだけ。
私のように餃子店の方が悪いんではないかな?という意見をひとつも見つけられなかったことです。
私も最初に報道を聞いたことは、そうかー、ホリエモンひどいことするなーと思っていたのですが、興味を持って情報を掘り下げ、詳しく知れば知るほど、
あれ?実はホリエモンはそんなに悪くないんじゃないかな?って気がしてきて、最後には、いや、これはだんぜん餃子店の方が悪いのではないか??と考えが変わっていきました。
ホリエモン餃子問題を、客観的&公平におさらい
この騒動を知らない方のために、ホリエモン餃子問題についてまずは説明します。
情報があちこちにバラバラにあって、ひとつにまとまっているサイトがなく、報道も偏っていて、大事な部分が欠けていたり大袈裟に書かれていたりするので、フラットな情報としてパズルを合わせていくのになかなか苦労しました。
2020年某日、地方にある人気の餃子店に、ロケで現地を訪れていた堀江貴文さんと、スタッフ2名(男性1名、女性1名)の合計3名がランチに訪れた。
外にはマスクを必ずしてください、という大きな張り紙がしてあった。堀江さんは最初からマスクをしていたが、スタッフは2名ともマスクをせずに入店した。
店内はせまく、カウンターの他にテーブルがいくつかある程度。
ウエイトレスをしていた店主の奥さんが、マスクをしていない人は入店できないことを3人に説明すると、女性スタッフはすぐにマスクをつけたが、男性スタッフはマスクを持っていなかったのでつけなかった。
マスクをつけないと入店できない、という奥さんに対して堀江さんが「でも食べる時ははずすでしょ」などと言った。
奥さんの誘導で3名は店の外に出た。奥さんでは折り合いがつかなかったため、奥さんがご主人を呼びに行き、餃子を焼いていたご主人が料理の手をとめて外に出てきた。
堀江さんが言うには→マスクをどの程度つけるか知りたくて奥さんに聞いたが「つけてください」の一点張りで質問に対する回答が得られなかったため、会話が堂々巡りになった。
餃子店が言うには、何度言ってもマスクをつけてもらえず、会話が堂々巡りになり、他のお客さんの迷惑になった。
餃子の店主はここでその顧客が堀江貴文さんであることに気づきます。
餃子店が言うには→「堀江さんですか?」「今堀江関係ねえだろ」堀江さんは大声で怒鳴った、最初から高圧的な態度だった。「めんどくさいから帰ってください」と言って帰ってもらった。
堀江さんが言うには→「ホリエモンだな」「いまそれ関係ありますか」常に冷静に静かに話していた。どの程度マスクが必要なのか、店のルールを知りたかった。「めんどくさいから帰れ」と言われ、入店できなかった。
その後、お店の店主がアメーバグログに暴言を使ってホリエモンの悪口を書いたそうです。その記事は削除されて読めません。
すると堀江さんが自身のFacebookで、お店の名前のヒントを出して、「コロナ脳狂ってる」などとこの騒動のことを書き、騒動が広まり、お店が特定され、ネット民からのいたずら電話や誹謗中傷などの被害が出た。
餃子店のアメブロ記事は、取材に答えた店主によるとかなり感情的になって書いてしまった、反省していると言っていました。
また、堀江さんはお店が特定されるような形でFacebookに情報を書いたことをとても非難されていますが、先に自分の悪口をブログに書いたのは餃子店の方、と言っています。
その後、餃子店を特定した人からいたずら電話が多くかかって来るようになり、SNSでの誹謗中傷がひどく、奥さんが対応しきれず泣き出してしまい、心労から体調をくずして働けなくなった。
以前に働いていたアルバイトもやめてしまっていてスタッフがいないので、お店の営業ができなくなった。
もしかしたら細かい部分でズレがあるかもしれませんが、概ねこんなところだと思います。
自分がもし、お客さんの立場だったら?
私が一番驚いたのは、マスクについて質問されたぐらいのことで、餃子店の店主が「めんどくさいから帰れ」とお客さんに言った、という部分でした。
報道ではほとんど強調されていませんでしたが、私はこれ、顧客を激怒させるきっかけを作ったとても大事な部分だと思います。
うわわわ、そんなことでお客さんに帰れと言っても成り立っているということは、このお店がすごい人気店で、顧客サービスとか、マヒしてわからなくなっちゃってるんじゃないかな、と反射的に思いました。
そして、もうひとつ強調したいのは、ホリエモンがこのお店に現れてから去るまで、たった1分間の出来事だったということです。
報道のイメージでは、めちゃくちゃゴネたような印象を受けたので、よく調べて、ホリエモンの到着から退散までたった1分だったと知って驚きました。
この餃子店の店主さんが書いたNoteの有料記事の冒頭の無料部分にも、防犯カメラの時間で1分程度だと書いてあるので、1分間というのはとても正確な数字のようです。
つまり、堀江さん達3人のうち1人がマスクをしないまま店内にいたのは長くても数十秒程度で、3人はスタッフの指示に従ってすぐに店の外に出て、到着から1分以内に店主に「めんどくさいから帰れ」と言われ、言われるがままに立ち去ったのです。
餃子店の店主は、ホリエモンが最初から高圧的な態度で、叫んだとか、怒鳴ったとか言っていますが、堀江さんはずっと静かに話したとして否定しています。
この部分は言っていることが違うので、どちらが正しいのかはわかりませんが、このたった1分の間に、堀江さんが他の人の目もある中、叫ぶとか怒鳴るとかは、ちょっと信じられません。ネットに出ている防犯カメラの映像も、大声を出しているようには見えません。
なのでこれは私の考えですが、この部分は餃子のオヤジさんが同情を買うためにちょっと盛ってるんじゃないかと思ってます。
なので、お客さんからすると、
楽しみに訪れた餃子屋さんで、到着したらマスク着用の張り紙があり、そのことについて質問したら「めんどくさいから帰れ」と言われた。
となります。
その時のお客さんの気持ちはどうでしょうか?
うちのやり手スタッフに意見を聞いてみる
私がお客さんだったらめちゃくちゃムカつくと思う。
それに、相手は影響力のあるホリエモンなのに、そんな暴言を吐いたらなんかあるかもしれない、って思わないのかな?なんでもう少し気をつけないんだろう、とも思います。
ということで、なんかよくわからなくなってきたので、うちの看板娘のスタッフの子に意見をもとめました。
彼女は27歳と若いですが、あのカルロスゴーンさんが定期的に通っていた銀座の高級イタリアンでビシビシ教育されて働いていたこともあり、飲食店のことをよく知っているし、頭が良くてすごく頼りになるスタッフ。しかも美人です。
イギリス人顧客ばかりのうちの店で、めちゃくちゃテーブルを仕切っていて、お客さんから人気があって、彼女が顧客とトラブルを起こしたりすることはありません。
その彼女の意見は、「餃子屋さんがもともとホリエモンが嫌いだったんじゃないですか?」というものでした。
笑笑!!!
なるほど、そうなんですかね。
それが事実かどうなのかはわかりませんが、でもやっぱり彼女のこの意見の中にも、餃子店の方に問題があったんじゃないか、という気持ちが読み取れます。
私たち飲食店はサービス業です。
お客さんはご飯を食べに来ているだけで、責任もないですし、そのお店の主がどんな性格なのかとか、何が起こるかなど、予測してきちんと対処しなければならない、なんてことはありません。
それに対して飲食店は、それまでに何千人も顧客対応をしていて、トラブルを予測して準備や対策をしておかなければならない立場のはずです。
ご飯を作るだけでなく、お客さんをコントロールするのもお店側の仕事なので、やっぱり状況に応じてきちんと先導していかないといけないのは飲食店の方だと私は思います。
自分たちで決めたマスクのルールについて、お客さんにちょっと質問をされたぐらいで、「めんどくさいから帰れ」なんて普通に対人マナーがおかしいし、そんな接客態度をしていたら、たとえホリエモンの件がなかったとしても、いつ他の顧客とトラブルになってもおかしくなかったのではないかと私は思います。
臨機応変が苦手で、打たれ弱い日本人
この件で奥さんは体調をくずし、療養が必要になったそうですが、私たち飲食店は、いつどこからいらっしゃるかわからないさまざまなお客様を受け入れながら仕事をしていかなければなりません。
私の場合は外国なので、日本食をよく知らない方も多いし、外国人は、口が達者で気が強い。
もちろんよいお客様が99%で、これはそれ以外の、例外のお客様の話です。
例えば、天丼を出したら「ごはんの上に天ぷらが乗ってるなんて説明がなかった。チェンジ!」ということもあったし、麩の入ったお味噌汁が気に入らなかったお客様から「味噌汁にパンをいれるな」というクレームをもらったこともあります。
飲み物を持ち込んだお客様に、持ち込んだものを飲む場合は持ち込み料がかかります、と説明したところ「だったら悪いレビューを書くわよ」と脅され、受け入れなかったところ、トリップアドバイザーに本当に悪いレビューを書かれたこともありました。
↑この人たち、ぜったい高級店やマクドナルドでは同じことをやらないのです。うちが個人店だから攻撃OKってことで、調子乗ってこういうことしてくる。
飲食店というお仕事の性質上、ひどいお客様がたまに現れるのはある程度は仕方がないことだと思います。
詳しいことは、アメブロの記事に書いてます。



じゃあ、餃子店はどうすればよかったのか
このホリエモン餃子事件、店主の奥さんが、一番最初にマスクの質問をされた時、慌てず騒がず、毅然とした態度で受け答えをする必要があったと思います。
「ルールが厳しくて申し訳ありません。食べる時はマスクをはずしていただいて結構ですが、それ以外の時はマスクをしていただく決まりでございます。そうでなければ、大変申し訳ないですがお食事していただけません」
みたいに。
仕事なんだからこのぐらいのことは言えて当然だと思いますが、そういうやりとりがどうしても苦手ならば、厳しいルールを作るかわりに店内でマスクを販売したり、マスクを持っていないお客様に使い捨てマスクを渡してお会計の時にマスク代50円を上乗せさせてもらったりということもできます。
マスクを無料であげるかわりに「ホリエモンさん、おいしかったらうちのお店をTwitterで宣伝してくださいね!」とコビを売って宣伝をお願いする手もあります。
顧客とのトラブルを回避して、お互いに気持ちよくことを進める手段はいくらでもあったと思います。
うちのできるバイトちゃんだったらたぶん、自分で持ち歩いている予備のマスクをタダであげるでしょうし、持ってなければ「では、私がマスク買ってきます!」と言って近くのコンビニにダッシュするんじゃないかと思います。
うちのお店はこの餃子屋さんみたいな人気店じゃないので、お客さんを大事にしないと簡単につぶれてしまいます。
誰でも利用できる飲食店で、「マスクしてください」という張り紙をすれば、そのルールをお客さんが100%守ってくれるという前提で問題なく経営が成り立っているのは、飲食店としてめちゃくちゃ恵まれた環境と言えます。
それは店主さんがおいしい餃子を作っているからに違いありませんが、それでも私たちは、基本的な顧客サービスというものをおろそかにすると、どんなに美味しいものを作っていても簡単にひっくり返される、という例に思えてなりません。

この奥さんは恵まれた環境と、ホリエモンにNoと言える強い旦那さんに守られ、本来なら仕事に必要なトラブル耐性ができていなかったように思います。
誰が来るかわからない一般顧客を相手にする仕事では、顧客対応に必要な強さや柔軟性を身につけて、イヤなお客さんのことはすぐにキレイさっぱり忘れるクセをつけて、自分で自分の身を守れるようにすることが大事です。
ちなみにもし、うちのお店のスタッフが、お客さんのマスクの質問に回答できず、顧客到着から30秒で私のところにきて「代わりに対応してください」と言ってきたら、私だったらキレます。
お客さんにキレるんじゃなくて、スタッフにキレる。
お給料払ってるんだから、ちゃんと仕事してよ、って思う。
最後はみんな、ハッピーエンドで
ちなみにこの事件後、この餃子店さんはクラウドファンディングで1500万円以上の出資を集めることができ、たくさんの応援の声とともに餃子店を再開することができました。
あの騒動がのおかげで、最後にはこうして収益面でも大きなプラスになり、餃子がおいしいお店として、日本中に名前が知られることになりました。
出資のおかげで新しいオンラインショップもできて、そしてきっとトラブルに対する対応力や人間力もアップして、一時的にはすごく苦しかったと思いますが、最後にはとても嬉しい結果になり、あの餃子屋さんの店主さん、あの日ホリエモンが訪れてくれたことに今はとても感謝しているに違いありません。
この騒動が大きく騒がれたおかげで、ネット民には個人をいたずらに攻撃して閉店に追い込んだりしたらダメですよ、っていうネットマナーの大切さが少なからず浸透し、ネット界のモラル教育がひとつステップアップしたように思います。
そしてホリエモンは、マスクのことを質問したぐらいでお店を追い出されて、非難をあびたままになってしまっていてかわいそう、と思えてならないのですが、私はこの騒動を通していろいろ考えるきっかけをもらい、たくさんのことが学べたので、やっぱりすごく感謝しています。
堀江さんの書籍のうち、たぶん半分ぐらいは読んでいるのですが、今後新刊が出たらまた読んで、堀江さんの今後の活躍を微力ながら応援したいと思いました。
ちなみに堀江さんのたくさんの良書の中で、私の一番のおすすめは、出所直後に出版された「ゼロ」と、数年前の「多動力」です。
自分自身を見つめ直して、謙虚に物事を始めたい人にはゼロ、いろいろ考えはあるけれど、いまいち行動に移せず、もんもんとしている人には多動力です。
この2冊はきっと誰が読んでも損がない、すごくいい内容なので、何かいい本ないかなあっと探している方はぜひぜひ読んでみてください。
ではでは、今日も鬼長文を最後まで読んでくださってありがとうございます。🎀
以上です。😊
おわり。
次の記事→ ロンドンのシェア賃貸問題、日本人と住むか、イギリス人と住むか。
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